活動報告

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5/28勉強会報告その後・・・【6/14追記】

先日のBiPH勉強会で「豪雨水害の被災者支援では、政府やNGOだけでなく、一般市民も個人としてボランティアで支援していた」という話をしたところ、当日参加してくださった方から後日「豪雨被害の支援のための個人ボランティアがたくさん集まったそうですが、混乱は起きないのですか?日本では、被災地に個人ボランティアが行くのは迷惑と言われます。」というご質問をいただきました。

出張時にお世話になった方の中に個人で支援活動をされたディリ在住の日本人の方がいましたので、その方にお伺いしたところ、以下のお返事をいただきました。ご本人の許可を得ましたので、そのまま掲載します。

 

 

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日本とは違い、ここティモールでは、ボランティアが押し寄せる事による、迷惑や混乱、非効率さ、などという概念自体が存在しないし、手伝ってくれることに対する迷惑、という考え方自体も今の所は存在しない、と考えてもらえばいいと思います。

 

平常時でも効率よく働くといった考え方が我々からすると恐ろしいくらいに「ない」国民性というか文化というか、そういう国なのです。(ここで「欠けている」とか「欠落している」と書いてしまうと、甲乙つけたことになってしまうので、あえて「ない」とだけ書きます。)

 

私達からすると、落ち込んでしまいそうなくらい同じ失敗を繰り返して、それでもなかなか学習しないという面もあります。ただし、どちらがいいのか、効率性が高い方がいいに決まってると言い切れるのかは、それぞれの価値観によって分かれそうです。ずっとこちらに住んでいると、もちろん効率いい方がいいに決まっているんですが、それだけじゃない否定ばかりできない何かモヤモヤとしたものが心の中に生まれて来ます、少なくとも私の中には。
と同時に、助けようと動き出す前段階で効率を重視し、迷惑を予測して、自治体からのオフィシャルな要望を待つことができる日本人、それに伴い結果的にこれで良かったんだと言えるくらいに効率的なシステムを組んで、それに従って社会全体が動ける日本人は本当にすごいし、みなさん誇りに思って欲しいです。こちらからすると不思議を通り越して神レベルです。

 

因みにもしこちらで迷惑がかかるからと個人で動くことをやめてたら間違いなく復興はもっと遅れています。政府や自治体の統率能力が日本に比べると圧倒的に弱いので、それぞれは微々たるものでも個人的に動く人もたくさんいてその合計量は決して無視できない影響力だったと確信を持って言えます。同時にいろんな国内の、日本の、諸外国のNGOや宗教団体などもそれぞれで連携したり、政府と連携したり、政府の対応の遅さに痺れを切らして、そこを飛び出して勝手に始めたり、最初から勝手にだったり様々で動いていましたし、一部団体はいまも支援を続けています。結局は最終結果としてどちらが効率よく支援を進めることができるか、ということで、政府や行政の基礎能力・体力・体制が整っている日本のようなところだと個人で動くのは得策でないんでしょうし、ここのような国では、行政を待っていたらとても間に合わず、助けられるものも手遅れになってしまうかも、ということだと思います。

 

僕らは全て個人、夫婦二人だけでできることをやりました。本当に偶然というか巡り合わせで知り合ったある家族の手伝いから始めました。その家は隣近所と比べても特に水の通り道となってしまったために被害も大きかったし、家族の中に男性がとても少なかったのです。で、スコップを持って泥かきの手伝いに通いました。最初の何日かは火も起こせず、配られた米は炊けず、インスタントラーメンをかじっていたので、そのお米を自宅に預かり、夜炊いて、少し魚などのおかずも作って翌日持って行ってあげたりはしました。そのうちに隣近所から「なぜ日本政府はあの家にばかりお金を配ってて不公平だ。」と根も葉も無いわけではないけど大いに勘違い甚だしい妬みが少しずつ聞こえ始めた頃、だいぶ家も片付きましたしあとは自分たちでなんとかできそうだと、(僕ら自身で)判断して、およそ1週間後に次の家に手伝いの場所を移しました。隣の家とかではなく、市内の全然離れたもとからの友達の家で、まだまだ泥かきが全然終わっていなかったウチです。そんな感じで3件ほどの家を中心に、(厳密には3軒だけというわけではなく、ちょっと隣近所の一角も泥かきしたり、あと知人から個人的に寄付したいといただいた現金を、隣近所に行き渡るように(全部というわけにはとても行きませんが)食料を買って分けたり、ある大きな団体が支援先を探しているという情報を聞いたので、自分の知っている地域を紹介し、結果的にそこにはトラックで物資が届いたりなどしながら、やがてフェードアウトという感じで今は個人的な特別な支援活動はしていません。僕らはこんな感じでした。

 

きっと僕らが手伝ったオタクのすぐそばには、もっとひどい被害を受けた家があったに違いありませんし、冷静に見返せばアンフェアな援助の集中や時間差が発生したケースは枚挙にいとまがないと断言できます。でも仕方ない部分がたくさんあるのも事実です。
願わくば、今回に限らず、日々の何事をも教訓にして、次に活かせるように改善して行って欲しいですよね。

 

偉そうなこと言うと、緊急時に資金を寄付していただいて緊急支援物資をいち早く効率的に届けることも国際協力の大事なアクションですし、それをいつかは彼らが自分たちでやれるようになるための準備のお手伝い、準備の仕方を学ぶ機会を提供することも大切な国際協力ですよね。
この国で頑張っているNGOの人々(日本人も含め)は、そうした背景を踏まえて、いろんなジレンマや理想と現実の狭間で葛藤しながら日々頑張っている人々(そうじゃない人も中にはいたって仕方ないですけど)がたくさんにいます。そのようにNGOにも団体に属してもいない僕には、少なくともそう見えます。
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上記の文を拝読して、以前バングラデシュで筆者が遭遇した出来事を思い出しました。2013年にバングラデシュの首都近郊でビルが倒壊し、4000人近くの死傷者が出たのです。当時筆者も首都にいて、そのときのバングラデシュ政府や市民の動きを見聞きしていたのですが、その時も政府が動く前に大勢の市民が支援に動きました。たぶん被災者とは縁もゆかりもない(当時の)同僚も、仕事を休んで支援活動をしていました。後で尋ねたところ、政府を待っていたら助けられる命も助けられなくなる、人ごととは思えない、自分ができることをやっただけだ、と言っていました。

 

そういえば、4月の豪雨災害で支援活動をしていたUNPAZの先生も、まったく同じ事を言っていました。

 

日本のように政府やNGOが組織として素早く動ける国や地域では、そのほうが個人で活動するよりもはるかに効率的かもしれません。でも、その支援の網から漏れてしまう人が確実にいることも、残念ながら事実です。

 

被災者支援や復興活動では、個人や近所の人による支援が有効な場合と、行政やNGOに任せた方がうまく機能する場合の両方があると思います。災害対策に必要なのは、個人や住民組織やNGOや行政など多様なアクターがいることと、そしてアクター同士が緊密に連携できることなのだと、今回の一連の出来事を通して考えました。

 

いずれにしても、被災者支援や復興活動について、日本や東ティモールやその他の国の事例で学び合うことは大切ですね。災害の種類や被害規模やアクターの違いがあるので、一概に比較することはできませんが、今回の東ティモールの人々の活動から、日本に住む私たちが学ぶべきところは多いと思います。

 

あらためまして、この度はご質問くださり、そして、それに対して丁寧にお答えくださり心より御礼申し上げます。

 

せっかくなので、今回見られなかったきれいな海を。水平線の彼方は日本です。

 

事務局:石本

 

 

 

【6月14日追記】

前述の質問を、支援活動に携わったNGOの職員さん(ディリ在住)にも問いかけたところ、以下のお答えをいただきました。こちらも、ご本人の許可を得ましたので、以下にご紹介します。

 

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東ティモールでも個人ボランティアは、支援を公平に分けようとする行政からは迷惑がられ、また混乱の要因だと思われています。なので、個人であれ団体であれ、支援をしたいものはみなcivil protectionという災害マネージメントを担当する政府の部署を通すように、と強く言われています。

ただ、東ティモールの場合、行政の対応が恐ろしく遅く、調整能力もないので、今回のような規模の災害では個人や団体が迅速に動いたことで緊急対応ができていたというのが実情です。

避難所として場所を提供していた方たちがおそらくとても大変だったと思いますが、支援を持ち寄る複数の個人団体への対応をとてもよくやっていたと思います。この方たちから迷惑がられたり混乱するからやめてくれと言われたという話は聞いていません。

村長や集落長といった行政の末端が災害時に調整機能を担っていたかというと、それもなかったと思います。支援したい人が歩いて人伝に情報を集めたり、SNS上で情報交換したり、それで支援の重複や不平等は発生していたと思いますが、それを迷惑がったり混乱するからやめてほしいといった声は、上記civil protection以外からは聞かれませんでした。

そもそもが混沌とした社会なので、この手の混乱はよくあること、くらいに思っているというのもあるかもしれません。

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防災・減災・復興を含めた一連の災害対策については、国や被災状況の違いなどがあるので一括りにはできませんが、一般化できる部分とそうでない部分がありそうですね。いずれにしても日本のノウハウを伝えたり、逆に他国のノウハウを学んだりすることは役に立つと思いました。私たちのような小さい団体でもできることを、今後も考え続けたいと思います。

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