市民サミット「グローバリゼーションと健康」分科会(2016年5月23日)報告
先週行われた伊勢志摩G7サミットに関連してNGO・NPOによる企画もいろいろ行われました。5月23日(月)、24日(火)に四日市のじばさん三重で開催された「市民の伊勢志摩サミット(略称:市民サミット)」もそのひとつで、Bridges in Public Healthとアジア保健研修所で、保健分野の分科会「グローバリゼーションと健康」(23日16:00~18:30)を担当しました。
権力と資源・資金の偏在を背景にした経済開発が、それ以前から社会的に不利な状況におかれた人びとの健康とくらしに大きく影響しているということについて、タミル・ナドゥ州の被差別民に起こっていることを考え、四日市市の公害の経験から学ぶ、ということを目的に企画しました。
まず、インドのタミル・ナドゥ州のダリット(カースト制度の底辺に置かれた被差別民)の村をスタディツアーで訪れた深澤あかりさん、山田紗帆さん(名古屋外国語大学4年生)からの報告がありました。200年来ダリットの人びとが入会地として使用してきた森林が、経済特区として開発されたことにより、かれらがこれまでの生活が営めなくなったという事例です。村人たちは、NGOや研究者などの支援を得て、経済特区を開発した公社と、そこで操業を開始した多国籍企業の両者をそれぞれ提訴しましたが、いずれも敗訴したとのことです。
引き続き、四日市再生「公害市民塾」の語り部で、定年退職までコンビナート企業のひとつに技術者として勤務しておられた山本勝治さんにご経験を共有していただきました。コンビナートが形成された経緯、海水と大気が汚染され、異臭魚やぜんそくの集団発生がおこるようになったこと、そのような中で公害裁判が提訴され、全面勝訴したこと、また、その後の四日市について、などをお話していただきました。認定患者数はのべ人数で2,216名、ピーク時に1,140名だったそうですが、認定されていないぜんそく患者も相当数いたとのことです。
さらに、その後4つの小グループに分かれて、「何が人びとの健康なくらしに負の影響を及ぼしていたか?」「そのためにどのような行動が取られていたか?」「誰がその行動に関わっていたか?」「私たちはさらに何ができるのか?」について話し合いました。人びとが力を合わせて連帯し、声を上げていくことの重要性、歴史に学び、伝えていくこと、「きく、しる、つなぐ」(山本さんたちの「公害市民塾」が上梓した本のタイトルでもあります)ことの大切さなどがシェアされました。
非常に具体的な事例から、グローバライゼーションという大きな問題を考えるという、野心的な企画だったこともあり、「2つのご発表をもっと深くつなげることができたのに」という厳しいコメントも若干ありましたが、これは司会の力量不足と反省しています。しかし、四日市を会場とした市民サミットで四日市の貴重な経験をお聞きすることができ、30人以上の参加者が熱くディスカッションすることができたことは非常によかったと考えています。