【勉強会報告】第6回連続勉強会(4月22日)
【勉強会報告】第6回連続勉強会(4月22日)
少々遅くなりました。4月22日に行われた、福岡県立女子大学 国際文理学部 食・健康学科准教授で当法人理事でもある水元芳による「太平洋島嶼国での肥満問題」の報告です。
今回はまず、水元さんの現在の研究フィールドであるミクロネシア連邦とその他の太平洋島嶼国の位置の確認からはじまりました。ミクロネシア連邦は赤道のすぐ北で、周囲にはパラオ共和国、ナウル共和国、マーシャル諸島共和国、キリバス共和国などがあり、これらはミクロネシアのグループです。太平洋島諸国には他にメラネシア、ポリネシアの国々があります。
ミクロネシア連邦は4つの州からなる連邦国ですが、各州は大きくなく、国全体の人口は10万を少し超える程度、研究フィールドのポンペイ州は約35,000人です。戦前は日本の委任統治、戦後はアメリカの信託統治を受けていましたが、1979年に主権回復、1986年に事実上独立したそうです。
太平洋島嶼国は肥満率が高く、肥満率国別ランキングのトップ10はほとんど太平洋島諸国です。そんな中、ミクロネシア連邦は世界12位なのですが、それでも成人男性の31%、成人女性の53%が肥満(BMIが30%以上)です。
今回紹介されたのは、混合研究のうち先行して行われた質的研究部分です。肥満対策に資するエビデンス構築のために新規作成する質問票の項目を検討することを目的に行われました。6組のフォーカスグループディスカッションによって得られたデータを「health belief model」を活用してテーマ分析していますが、新たに「肥満となる要因」「太っていることの利点」「太っていることの不利点」「減量の難しさ」「価値」などのカテゴリーも浮上したとのことです。
興味深かったのは、若い世代は太っていないことが多いのですが、そのスリムな体型に対して肯定感を持っており、太っている中高年層は太っていることを許容している、すなわち、どちらの体型でも「ありのままの自分」を肯定しているということが認められたことです。また、肥満の原因は地方・都市部、性別、立場に関わらず理解されており、また減量の難しさについての考え方も表明され、太る前の学齢期からの介入の重要性が示唆されました。
勉強会参加者の中には、パラオで肥満問題を含む慢性非感染症の研究をしている人もいて、質疑応答も活発に行われました。ちなみに、パラオでは、フィリピン人、バングラデシュ人の移住者も多いそうですが、パラオでの生活が長くなっている移住者たちの肥満も問題になっているようです。その他、太平洋島嶼国ではいつごろから肥満が問題になってきたのか、それはアメリカ統治による食習慣の変化と関連はあるのか、遺伝的要因はないのか、などの疑問も出されました。
今回の結果を参考に作られた質問票で量的調査も既にデータ収集が終了したとのことです。そちらの結果に関する勉強会もまたぜひ開催したいと思います。