活動報告

  1. TOP

「誰もが当たり前に社会に参加してよいという空気を作りたいだけ」7/26てらこや報告

パリオリンピック開会式直前の7月26日に開催した勉強会は、スポーツを通じたインクルーシブなまちづくりをテーマに、理学療法士の山田規央さんのお話をお聞きしました。

 

 

山田さんがお住まいの新潟市は1983年から新潟マラソンを開催しています(2010年から新潟シティマラソンに名称変更)。2017年からはフルマラソンに加えて10.6kmのファンラン部門が併設され、コロナ禍を経た2022年には誰もが気軽に参加できる2kmの「ユニバーサルラン」部門も設けられました。山田さんはこのユニバーサルラン部門創設に尽力したお一人です。きっかけは、2015年に山田さんが担当する患者さん(車いすユーザー)の「自分も走れるかな?」の言葉で、主催者である新潟市の担当部署に山田さんが問い合わせたことで取り組みが始まりました。

 

 

「ユニバーサルラン」とは、子どもから高齢者まで、また障害の有無に関係なく参加できるラン種目という意味です。実際に新潟シティマラソンのユニバーサルラン部門の参加資格を見ると、「誰でも可」と書かれています!コースマップを見ると、新潟市のランドマークである萬代橋を3つのラン参加者全員が通るコース設定になっています。多様なランニングスタイルの人びとが一緒に橋を渡る様子を想像するだけでワクワクしますね。

 

 

新潟シティマラソン2024
https://runfes-niigata.com

 

 

山田さんのお話をお聞きして、新潟シティマラソンのユニバーサル化が実現した背景には、いくつかのキーポイントがあると感じましたので、ご紹介します。

 

*******************************************

1.ワーキンググループに議員を巻き込んだ:行政との協議を進めるために、志を同じくする仲間が集まって「ユニラン連絡会」が発足しましたが、メンバーにはパラスポーツやリハビリテーションの専門家に加えて市議会議員がいました。行政に働きかけするうえで議員がメンバーにいるのは強みですよね。ちなみに、「ユニバーサルラン」という言葉の発案者も、この議員さんとのことです。

 

2.誰もが参加できる「ユニバーサルラン」にした:障害者限定のハンディマラソンや車いす競技スポーツに限定したマラソンではなく、老若男女や障害の有無を問わず、体力のある人もない人も自分のペースで参加できるものを目指しました。それには、新しくイベントを立ち上げるのではなく、既存の新潟シティマラソンの刷新という形で実施することを目指して、そのための交渉相手として大会の企画運営を担当する市のスポーツ担当部門に定めました。ともすれば福祉部案件に扱われがちなところですが、スポーツ担当部門を相手にしたところがユニバーサル化たる所以ですね。

 

3.コロナ禍期間の有効活用で関係者の理解を進めた:折衝を続けていた過程で新型コロナ感染症拡大により、2020年と2021年は規模を縮小した代替イベントが開催されました。このイベントでユニバーサルランもお試し開催され、県障害者スポーツ協会や県理学療法士会のサポートにより成功したことで、運営関係者の安全面への心理的負担が下がり、のちの通常開催の再開時にユニバーサルラン部門の正式追加につながったとのことです。車いすユーザーと関わる経験が少ない運営関係者の理解が深まったことだけでなく、実際の運営ノウハウを試行錯誤する機会になりました。

*******************************************

 

山田さんは「スポーツを通して、誰もが当たり前に社会に参加してよいという空気を作りたいだけなんです」とおっしゃっていました。実際に、車いすユーザーをはじめ誰もが気軽に参加できるマラソンイベントは徐々に広がりを見せています。「誰もが気軽にスポーツを楽しめる」インクルーシブなまちづくりをめざして、まずは地元のスポーツイベントをチェックしてみてはいかがでしょう?山田さん、貴重なお話をありがとうございました!

 

余談ですが、山田さんがJICA海外協力隊OB会に寄稿された記事を紹介します。ユニバーサルランへの熱い思いが綴られています。よかったらこちらもお読みください。

https://blog.canpan.info/nippon-genki-jocv/archive/214

 

*参考:「ユニバーサルスポーツをはじめよう」(名古屋市スポーツ市民局)リーフレット

 

TOP