6/11追記【5/24てらこや報告】被災者支援に必要な柔軟性と連携力
*本記事について6/11に参加者からのコメント等を追記しました。(追記部分は本文の最後にあります。)
この日のテーマは「能登半島地震の被災者支援 -リハビリテーションの視点で-」。話題提供者は大室和也さん(AAR Japan[難民を助ける会]職員、理学療法士)でした。AAR Japanは国内と海外で、紛争・災害あるいは障がいなどさまざまな理由よって社会的に弱い立場にある人々を支援する国際NGOで、現在は日本も含め18か国で活動しています。日本では2011年の東日本大震災の被災者支援をはじめ、地震・豪雨・台風災害などの被災者の支援にあたっています。この日の勉強会では、元日に発災した能登半島地震での被災者支援活動をご紹介いただくとともに、大室さんの専門性にも関連する「大災害におけるリハビリテーションスタッフの役割と課題」について考えました。
大室さんによると、今回の能登半島地震の特徴は「非日常時の大災害」とのこと。被災者が地域住民だけでなく年末年始で実家に帰省していた親族なども含まれたことや、公的機関や病院・福祉施設の多くが年末年始シフトで一時的に機能低下していたことなどがあったとのことです。災害対応はどの地域や機関でもシミュレーションされていると思いますが、年末年始など究極の非日常までも想定する必要があることを、大室さんのお話を聞いて改めて実感しました。
また、在宅の障害者や高齢者はニーズの個別性が高いことや行政の支援が届きにくいこと、現地に住む在留外国人の多くは技能実習生で防災減災の知識がなく地域のネットワークからも漏れていることなどがわかりました。AAR Japanは障害者団体や国際交流協会などと連携して上記をはじめとする要配慮者の個別ニーズに対応するほか、お茶会を催して誰もが集える場を作り、そこで被災者のニーズを聞いて活動につなげたとのことです。
災害現場でのリハビリテーションニーズに対応すべく、近年ではJRAT(災害リハビリテーション支援チーム)が派遣されることも増えました。今回の能登半島地震でも、これまでに966チーム(リハビリテーション専門医、作業療法士、理学療法士等)が派遣され、 避難所等において住環境の応急的整備やリハビリ支援を実施したとのことです。ただ、JRATは単発の専門家派遣にとどまっており、リハビリテーション専門職の強みである「生活再建に向けて、生活の場で息の長いかかわりをもつ」までには至っていないのが現状です。
理学療法士や作業療法士などのリハビリテーション職にとって、災害時に必要なスキルとはなんでしょうか?大室さんは被災者支援でリハビリテーションスタッフが果たす役割として、一緒に考える、その場の対応力、エビデンスベースで考えること、先を見通せる力、リスク管理などをあげました。被災地では発災後のフェーズによってリハのニーズも変化するので、リハビリテーション職が被災者の個別ニーズに沿うための力を蓄えることや、関係諸機関と連携することは必要不可欠だと思われます。大室さんが提言したこれらの力は被災者支援だけでなく、平時の医療・福祉や開発の現場でも必要なものなので、私たちは普段から意識的にこれらのスキルを身に着けることが必要だと思いました。
参加者の方からのコメント(一部)を以下にご紹介します。
「私は、現役時代行政の保健師として働いており、阪神淡路大震災、新潟中越地震の際、被災地に派遣され、避難所の巡回相談や家庭訪問をした経験がありますが、今日話題になっていた多職種の連携や情報交換は大変重要で、行政でカバーできない部分をNPO、ボランティアの方々が担っていただき、支援が隅々まで行き届くようになればと思います。被災者の方々の健康や生活全般を支援するという共通の目的に向かって、それぞれの専門性が生かせるとよいと思います。」
*以下、6/11に追記しました。
参加者からのコメントをもう一つご紹介します。
「とても、興味深く視聴させていただきました。災害支援は、やはり連携がどれほど大切かというのを知ることができました。大きな話になって、とても不可能なのかもしれませんが、この間、災害支援を経験なさった方々に、どの時点でどんな支援が・・といういくつかのアルゴリズムのようなものを作っていただいて、そこで、どういう団体がその支援をできるのかというような、リストができるとよいのでしょうね。最近、私も災害時医療通訳というのをおこなおうという思いを持った団体に所属し始めましたが、その存在自体もなかなか知ってもらうことは難しいでしょうし、ここで使いたいと思っている他団体の方がいても、そこと元々関係がなくてはそれを伝えにくいという事があります。日頃から、対策本部がすぐ使えるようなそういうものがあればなあなどと思った次第です。」
このコメントに対して、大室さんから以下のお返事をいただきました。
「開発系の活動するさいによくNGOマッピングっていうのをしますね。海外の緊急支援でも、4Wといってどこでだれがいつどんな活動をする予定なのかをセクターごとで共有する仕組みがあります(クラスターアプローチ)。国内災害でもそうしたクラスターアプローチがすぐとれるようになると「どの団体」が動けるのかの方は整理できますね。日本国内の団体なので百以上になるでしょうが、予めリスト化することはできそうです。あと、フェーズやニーズの見極めは、一般論としてはありますが現地現地で確認する必要がありますね。予め何となくニーズをカテゴリー別、フェーズ別にしておいて、その場でニーズをピッとおすと関連団体が出てくるみたいなということですかね。ぜひ作ってほしいです。」
各団体の働きが明確にわかっていて、現地の必要としていることに的確に当てていく事ができると本当によいですよね。実際に実行するのは生半可ではないと思いますが、あえて、実現させたいと言ってしまいます。(←参加者コメントの受け売りですw)
災害を避けることができない環境に身を置く私たちが、それぞれの立場や役割でできることやるべきことを改めて考える機会となりました。参加者のみなさんが、大室さんのお話から何か活動のヒントを得られたとしたら主催者として嬉しい限りです。大室さん、参加者のみなさん、貴重な機会をありがとうございました!!!