データを上手に使いましょう!3/24勉強会報告
3月24日の勉強会は「リハビリテーションの普及とデータベースの活用:データを使ってできることを考える」のテーマで、山口佳小里さんをお招きしてお話を伺いました。
山口さんは作業療法士として臨床や大学に勤務し、現在は国立保健医療科学院で医療・福祉サービス研究部の主任研究官として国内外で活躍されています。今回は政府や地方公共団体が公表している統計データ(オープンデータ)の活用方法を、山口さんが取り組まれている研究(高齢者への効果的なケアに科学的介護情報システムを活用すること等)を通してお話しいただきました。
官民データ活用推進基本法(平成28年)のもと、オープンデータの範囲は想像以上に多く、かつ手軽にアクセスできるものとなっています。例えば、e-Stat(政府統計の総合窓口)のウェブサイトのトップページはこんな感じ。
データの閲覧だけでなく、二次利用しやすいように整えられたデータセットをダウンロードすることもできます。
今回の勉強会で山口さんが参加者に伝えたことは、リハビリテーションの普及に向けて、データベースを活用することの意義でした。
データ利用のメリットは3つ。
1.国や自治体の制度・施策への還元・・・制度設計の基本となるのは現場のニーズですが、現場のニーズを届ける手段としてデータを使えば客観性が担保されます。行政との交渉や政策提言の際に使えば説得力が増すでしょう。
2.エビデンス構築・・・個々の病院や事業所が事業計画を作る上での根拠資料(活動が地域の実情に沿っているか等)や、活動効果を検証する際の判断材料として使えます。例えば、地域で介護予防事業を行うときに、対象・場所・活動内容・頻度などを決める際の根拠資料としてデータを使えば、所属長や地域住民にも説明しやすいですし、数値の変化で効果を実感する方も多いです。
3.国際貢献・・・持続可能な開発目標(Sustainable Development Goal: SDG)の3「あらゆる年齢のすべての人々の健康な生活を確保し、福祉を促進する」を実現するために、WHOは「Rehabilitation 2030」(2030年までにすべての人が必要なリハビリテーションの機会にアクセスできるようにする活動)を提言しました。データの活用もその中に含まれています。
勉強会では、保健医療関連のデータベースもご紹介いただきました。
参加者からはたくさん感想をお送りいただきました。ここではその一部をご紹介します。
・データを使って臨床で活躍できることやデータの重要性について勉強になりました。
・量と質の研究それぞれ有意義であることを考える機会をいただきました。その中でビッグデータをどう使うかひとつひとつの研究のもう少し詳細を知りたかったです。またご質問させていただきます。どうもありがとうございました。
・当方も業務にて、市町村や県、地域包括支援センターと一緒に話すことが多いのですが、データを用いた方がわかりやすいと思っていました。データをどのように『活かすか』が課題でした。とてもタイムリーです。
山口さんに参加者の感想をお伝えしたところ、以下のメッセージをいただきました。
「感想をお寄せいただきまして、ありがとうございます。ご参加いただいた皆様にとって、少しでも役立つ内容であったならば幸いです。既存のデータをわかりやすく整理して見せることで、現状を把握することに役立ちます。さらに、既存のデータを分析することで新たな知見をえることが可能です。一方で、データで示せることの限界を理解することも重要です(ナラティブな手法によってこそ把握できることもあります)。リハビリテーション普及に繋がる研究を行えるよう、引き続き精進してまいります。」
リハビリテーション分野は長年にわたり量的研究とナラティブの間で揺れ動いてきました。山口さんのメッセージはナラティブを否定するのではなく、データの強みを活かそう、というものでした。データを読み解く面白さも感じられた時間でした。山口さん、ご参加くださった皆さん、ありがとうございました。