【5/28勉強会報告:ロックダウンと豪雨被害の東ティモールで】
この日の勉強会は、BiPHの東ティモール事業の進捗と、3月の出張で見聞きした現地の様子についてBiPH事務局の石本(筆者)が報告しました。
まずはコロナ禍が始まった2020年3月から現在に至るまでの東ティモールの様子を。
東ティモール政府は自国の医療体制への負担を避けるべく、国民に新型コロナ感染症が蔓延しないよう、早くから対策をとってきました。2020年3月21日に初めて感染者が発表されたのと前後して、政府は非常事態宣言を全土に発令し、帰国者入国者対応を強化するとともに、市民にも活動制限を課しました。活動制限の内容はかなり厳しいもので、市民からは不満の声も上がっていましたが、その甲斐もあってか、一日の新規感染者数は長らく一桁台に抑えられていました。ところが、2021年に入ると感染者数は徐々に増え、政府は3月9日に首都ディリのロックダウンに踏み切り、市民活動は更に制限されました。誰もが疲弊する中、更に追い打ちをかけたのが4月3日から4日にかけての豪雨です。
被害は東ティモール全土に及び、特にディリでは市内全域が浸水し、中には川沿いの家が流失した地区もありました。4月8日にロックダウンは緩和され、人びとは復旧に向けて動きましたが、その結果、新規感染者数も一気に増加したことで、政府はロックダウンを再開し、現在に至っています。
感染症対策をとりつつ災害からの復興も進めるという、難しい対応が求められる状況下で、現地で筆者が感じたのは、人びとの温かさと力強さでした。
・コロナや災害への対応の早さ
・日本以上に厳しい活動制限が強いられるなか、その理由を誰もが理解し守っていること
・市民が自発的に被災者への支援活動をしていること
・政府とNGOが協力して被害調査や支援活動に携わっていること
カウンターパートであるパーツ大学公衆衛生学部の先生たちも例外ではありません。非常事態宣言下で大学も休校が続く中で、先生たちは状況の変化に柔軟に対応しつつ、試行錯誤しながら学生教育を続けていました。コロナ禍で両国ともに厳しい状況が続くなかで、今後どのように活動を進めていくかを話し合い、方向性を見いだせたことが今回の出張の成果となりました。
今回の勉強会には東ティモールに縁のある方も多く参加されました。また、ディリ在住の方には現在のディリの様子や最新情報をシェアしていただけました。終了後のアンケートでは、コロナの状況が理解できた、災害支援について考えさせられた、という感想のほか、東ティモールの良さを改めて知った、というコメントや、活動に対する応援メッセージもいただきました。ご参加下さった皆様、本当にありがとうございました!
最後に、今回の出張で出会った方が話してくれたことばをご紹介します。
「僕たちは独立運動の修羅場を乗り越えてきた。だから今回もきっと乗り越えられる。」
これが東ティモールの人びとの強さの源なのでしょう。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。