「医療を含めた幅広い分野で、ともに学ぶ場を」1/22勉強会報告
1月22日の勉強会はFabry NEXT/ペイシェントサロン協会の石原八重子さんをお招きしました。石原さんはファブリー病*という希少疾患の患者支援団体Fabry NEXTを運営するほか、ペイシェントサロンという、患者や医療者が交流する会を名古屋市で開催しています。この日の勉強会では、石原さんがFabry NEXTを立ち上げた経緯や、ペイシェントサロン名古屋の様子、今後の展望などをお話しいただきました。
石原さんがファブリー病と診断されたのは11年前。その後同病の患者さんとの出会いを経て、情報交換や交流・啓発を目的としたFabry NEXTの立ち上げ、そして、医療への関わり方について患者が学ぶ場=ペイシェントサロンにつながっていきました。
ペイシェントサロンは、名古屋では月1回のペースで開催されています。普通のカフェの一角で、お店の美味しいドリンクを飲みながら、事前に決めたテーマに沿って参加者が話し合います。テーマに関心のある人なら誰でも参加可能で、患者や医療者のほか、家族、障害者、介護従事者、学生、教員や、たまたまカフェにいた一般の方が飛び入り参加することもあるそうです。
ペイシェントサロン名古屋が目指すものとして、石原さんは「フラットな対話を通して、『患者が医療への関わり方を学ぶ場』から、『医療を含めた幅広い分野において、ともに学ぶ場』にしたい。そして、それが当たり前にある社会にしたい」と話されました。
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参加者の方々からたくさん質問&コメントをいただきました。一部ですが石原さんのご回答と併せてご紹介します。
Q.「患者会」と「ペイシャントサロン」のいちばん大きな違いは何でしょうか?
A.対象を絞っているか否か、だと思います。
私たちFabry NEXTは「患者会」ではなく「患者支援団体」を名乗っています。患者本人だけでなく、支えたいと思っていただける方は誰でも対象になります。団体名に病名が入っていると、それに関心のある方が集まります。その集まりで取り上げる内容も特定の病気に関連深いものになります。場合によっては、立場の違う方が排除されがちになります。同じ病気で集まることも、疾患や立場を越えて集まることも、どちらも大事だと私は考えています。そのため、両方の活動を並行して続けています。
Q.石原さんが一番印象に残っている会のテーマとその時のワークでのディスカッションは何ですか?
A.いくつもあります。ひとつ挙げると、「病気について、上手に周囲へ伝えるには?」です。病気によっては、周囲の人に伝えておかないと命に関わることがあると具体的に知れました。たとえば、糖尿病患者さん。低血糖で意識を失った時は自力で対処することができない。わかりやすいところにポーチとブドウ糖(飴など)を入れておく。認識票(軍などで使われるドッグタグ)をつけているがん患者さんもいらっしゃいました。「病気のことを知られたくない」という話を身近でよく聞いていたので、安心して暮らすために周囲に知ってもらわなければならない方のお話は衝撃でした。
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「医療を含めた幅広い分野において、ともに学ぶ場」とは何か。石原さんのお話を伺って、こう考えました。
幅広い分野:病気についての悩みは治療のことだけでなく、生活上での困りごとや使える制度、人間関係などいろいろです。そして、それらの悩みや対処方法には、他の疾患の患者さんにも共有可能なものもあります。患者会のような「○○病の患者」という枠組みを超えてつながることで、得られる情報は格段に広がるでしょう。
ともに:患者だけでなく、障害者・高齢者・医療者・介護者・一般市民などいろんなアクターが、同じ立場で場とテーマをともにすることで、お互いの立場や困りごとを知り、共感したり、時には共感できないことにも気が付きます。また、自分の持つ情報や経験が誰かの役に立ったり、実はあまり使えなかったりすることも実感します。特に医療や福祉のプロにとっては、このような患者サイドからのブラッシュアップは貴重な学びの機会になるでしょう。
ペイシェントサロンが挑戦しているのは、誰もがそれぞれの間にある見えない壁に気づき、笑顔で壁を自由に行き来する関係づくりなのかもしれません。石原さん、参加者の皆さん、ありがとうございました!
Fabry NEXTやペイシェントサロンをもっと知りたい方はこちらからどうぞ
Fabry NEXT
ペイシェントサロン協会
https://patientsalon.wixsite.com/patientsalon
名古屋での開催情報はこちらで
ペイシェントサロン名古屋
https://ja-jp.facebook.com/patientsalonnagoya/
次回ペイシェントサロン名古屋は2月28日(日)だそうです。
テーマ「難病ってなんだろう?」ちょうどRare Disease Day (世界希少・難治性疾患の日)にあたります。
*ファブリー病はからだの中の酵素の働きが足りないために、分解されるはずのものが体内にたまってしまうことで起こる、患者数がとても少ない病気です。子どものときに手足の痛みや、汗をかきにくい、発疹といった症状が現れることや、大人になってから心臓の病気、腎不全などの病気が現れることがあります。ファブリー病を含む「ライソゾーム病」 は、国の社会保障制度で、「指定難病」および「小児慢性特定疾病(18歳未満)」に指定されています。
(LysoLifeファブリー病のWebsiteより抜粋 https://www.lysolife.jp/about/fabryabout.html )