9/4勉強会報告「ひとりひとりが社会を変えるアクターに」~Helping Health Workers Learnからのメッセージ~
9月4日(金)の勉強会のテーマは「デビッド・ワーナーの“Helping Health Workers Learn”を知ってますか?」話題提供者は(公財)アジア保健研修所(AHI)の清水香子さんでした。
BiPHはこのたびAHIとの協働プロジェクトとして、デビッド・ワーナー氏の名著“Helping Health Workers Learn”の日本語訳にとりかかることになりました。そのため、今回の勉強会はプロジェクトのキックオフということで、この本の魅力をご紹介するとともに、翻訳事業のご紹介&翻訳ボランティア募集を兼ねた、いつもとは少し趣旨を変えて開催しました。
はじめにモデレーターの樋口さんからプロジェクト立ち上げの経緯と、今回の勉強会の主旨を説明し、続いて清水さんから本の魅力をご紹介いただきました。
清水さんによると、この本の魅力は以下の3点。
1.「健康」と「社会」の関係を考えるツールやアイディアが満載
本書は住民が健康の社会的要因に目を向け、住民を「無知で」「弱く」させている社会の不公正なシステムを、住民自らが変える力をつけていくことを狙って書かれています。そのため、住民、ひいては保健ワーカーをはじめとする支援者自身も含めて上記の気づきを促すツールが、使い方例とともに掲載されています。しかも、一方的に講義するのではなく、身近な道具や材料を使ってみんなが参加しながら学べる方法が!
その一例として、勉強会では食べ物ゲームや、AHIの国際研修でのファシリテーション手法などが紹介されました。
2.べたなタイトル
本書のタイトルを直訳すると「保健ワーカーが学ぶのを助ける」
この場合の保健ワーカーとは、草の根レベルで地域住民と直接関わったり、住民と行政や支援機関との間を取り持つ人たちのことを指しますが、特に途上国の保健ワーカーは、日本の看護師さんや保健師さんのような専門教育を受けている人はごくまれです。ですから、本書で使われている言葉もあえて専門用語は避けられています。平易な単語や言い回しの多い、わかりやすさが本書の魅力ですね。
3.自分なりに使える・見方が広がる教材がいっぱい
ワーナー氏は本書について、「この本は『レシピ本』ではありません」「(本書にある方策や提案を)批判的に見て、選び、できることを使い、応用してください」と述べています。本を読んだ人がそれぞれの立場や現場で使えそうな部分を、アレンジして活用することを応援しています。内容のモチーフは保健ですが、保健以外の分野、例えば教育や開発・地域づくり・権利擁護など多岐にわたる分野で応用可能ですね。
最後に、なぜ私たちが今この本の翻訳に取り組もうと思ったのか?
私たちは今、コロナ禍という未曽有の体験の只中にいます。コロナはいわゆる身体症状だけでなく、私たちの心の闇を、さらには私たちが作った社会のありようを容赦なくあぶりだしています。
例えば
・より弱い人たちの命の軽さ・弱い人たちへのより大きな打撃(格差)
・デマや情報操作、偏見や差別
・社会の脆弱さ
・保健課題と社会課題・開発課題が結びついていること
そんな今こそ、この本のメッセージが生きるときだと。
参加者の皆さんはこの本を全く知らない、著者あるいは名前は知っているという方がほとんどでしたが、終了後のアンケートでは「本の内容を知りたくなった」という意見が多数。また、「内容を知るためにも、実際にゲームやディスカッションを体験したかった」という意見もありました。私たちの勉強会の運営方法にも、この本は活用できそうですw
「ひとりひとりが社会を変えるアクターに」
このプロジェクトがそのきっかけになることを願ってやみません。