活動報告

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【第64回勉強会報告】作業療法士が当事者になって見えたこと -人工呼吸器をつけて地域で暮らす-

2月7日の「てらこや」は押富俊恵さんのお話でした。押富さんは、作業療法士であり、車いす&人工呼吸器ユーザー。尾張旭市を活動拠点に、障害福祉や地域福祉の問題について当事者目線で支援や啓発活動を行っているN P O法人「ピース・トレランス」の代表でもあります。

作業療法士になって3年目の24歳の時に重症筋無力症を発症して、短期の間に寝たきりとなり、さらに人工呼吸器が必要な状態となったそうです。ご本人曰く「一時は引きこもりだった。」とのことですが、今は、仕事に、N P O活動に、趣味にとお忙しく、どこへでも電動車いすで移動しまくっています。(当日もご自宅から会場まで公共交通機関でいらっしゃいました。)

現在、夜間のサポートをされているご家族を含めて、24時間ヘルパーが必要で、関わっている支援者(ヘルパー、訪問看護師、医師など)は20人くらい。「生活者でありたい。」とおっしゃいます。その意図するところは、「“在宅療養者”と思われることが多いけど、そうじゃない。」

例えば、訪問看護実習の看護学生に「パジャマでないんですね?」とか、趣味のペーパークラフトに没頭していると「休憩しましょう。」と言われたり。押富さんの意図に関わらず熱い食べ物禁止のていねいな申し送りで、ヘルパーのみなさんがみんなぬるいうどんを作ってくれたり。町内会の防災訓練に参加しようとしたら「(参加しなくて)大丈夫です。」と気づかわれたり。

周囲が、特に医療従事者が、病気のある人や障害のある人を、「治療の対象」と見ていて、「地域で生活する人」であるという意識が低いということを、さまざまなエピソードから気づかせて下さいました。


ADL以外の時間をどのように使うのかは人それぞれ。地域生活を支援するには、「その人らしい生活」を保障し、支援する視点が不可欠なのですね。


時節柄、マスク人口が多かったです

ピース・トレランスの活動もいろいろ紹介していただきました。障害体験とレクリエーションをかけ合わせた「ごちゃまぜ運動会」や、お店の気持ちを見える化して声をかけやすくする「おてつだいしますシール・プロジェクト」、この3月には「障害体験×ショッピング」も企画しているそうです。どれも楽しそうな企画です。

ちなみに、これが「おてつだいしますシール」尾張旭市内で見ることができますよ。中央は尾張旭のキャラクター、あさぴーです。

おてつだいあさぴー

今回の勉強会で残念だったのは、若い人の参加が少なかったこと。特に医療系学生にはぜひ聞いてもらいたい話でした。幸い、看護大学教員の参加が複数あり、みな口々に「学生に聞かせたい。」と言っていたので、ぜひ実現して欲しいです。

終了後は、押富さんを囲んで味噌煮込みうどん。押富さん含めて車いすユーザー3人とともに入りましたが、満席の店内でちゃんと対応していただけました。押富さんはじめ地域で暮らす障害者の方の思いや活動が実を結びつつある、そんな温かい夜でした。


押富さん、参加者の皆さん、ありがとうございました!

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