活動報告

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【5/23てらこや報告】「体験知」×「専門知」⇒「実践知」へ∞

 

5月の勉強会は山田隆司さんをお招きし、「障害のありか・アプローチのコツ ~当事者セラピストと振り返る支援の現場~」のテーマでお話しいただきました。

 

山田さんは子供の頃から体の不自由さを抱え、自分の障害体験が誰かの役に立てばとの思いで、作業療法士となりました。現在は障害当事者と支援専門職者のふたつを兼ね備える「当事者セラピスト」として、子どものリハビリテーションに携わる傍ら、患者会活動・専門職教育・講演・研究・地域づくりなどさまざまな活動をされています。この日は山田さんが幼い時から体験したことや感じたこと、山田さんが考える当事者セラピストの役割や、医療や福祉の支援専門職者に期待すること等をお話しいただきました。

 

山田さん曰く、病気や障害の当事者は体験(疾病体験、障害体験)を通して主観的な知見=「体験知」を得ます。それに対して、医療や福祉の専門職者が有するのは、専門知識や過去の臨床経験など客観的なもの=「専門知」と言えます。これら主観性(体験知)と客観性(専門知)を相互活用することが、専門職の質の向上を促し、患者・障害者中心の医療・福祉の実践につながること、そしてそれらの積み重ねが、共生社会実現に有効な「実践知」となる、とのことです。

 

 

 

 

患者や障害者は社会生活において様々な障壁に直面します。それらの障壁に対して専門職者が選ぶ(あるいは当事者に提示する)アプローチは、実は得てして患者・障害者のニーズとズレがちだということを、山田さんはご自身のエピソードを通して語られました。「当事者の声を支援者へ、支援者の声を当事者へ、双方の声を社会へ」共生社会の架け橋として山田さんをはじめとする当事者セラピストの役割は大きいですね。

 

 

 

 

「たくさんの『語り』(体験知)が集まれば根拠となり、それが実践知へと発展する。そのためにも、まずは当事者のありのままを受けとめることから始めて欲しい」と語る山田さんのメッセージを、真摯に受けとめたいと思います。

 

 

今回の参加者には、当事者、支援者、当事者セラピスト、医療系学生などもいらっしゃいました。それぞれ自分の立場に照らし合わせて、山田さんのお話を受けとめた様子です。以下、参加者のおひとりの質問をご紹介します。

 

質問:当事者で専門職という希なお立場の山田さんのお話しを聴けて学びになりました。両方の立場がわかるのは山田さんの強みであることは間違いないと思いますが、精神的におつらいこともあるのでは、と思いました。特にずれに気づかない専門職に出会ったときなど。

 

この方からの質問に対して、山田さんはこのようにご回答されました。

「両方の立場が分かるからこそ精神的につらいこと」はあります。とても大好きな「療法士」の仕事をしている他の人々が、「療法士の魅力や強み」に気づかずに何となく仕事をしている様子を見ると「なにやってんの?僕より身体動くのに!」という感情になることもしばしば。それこそ、「患者のことを理解する前に、ありのまま客観視(俯瞰)できないの!?」って憤っています。

 

山田さんは「社会モデル」という言葉を使わずに、社会モデルを理解してもらう取り組みもしています。今回、勉強会の中で体験した「障害平等研修(DET)」もその機会の一つです。また、小学生向けの福祉実践教室では、ゲーム形式で実施することもあるそうです。相手が楽しみながら大切なことを学べる工夫は、どの場面でも場面でも活かせそうですねw 山田さん、ご参加くださった皆さん、ありがとうございました。

 

山田さんは2022年にもBiPHの勉強会でお話しいただきました。その時の報告記事も併せてご紹介します。

 

ありのままを認め、主体的に生きる・・・3月25日てらこや報告

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